岐阜北法人会青年部会 中国視察研修

日 時 : 平成24年5月25日(金)~27日(日)
行 先 : 中国 大連三栄水栓有限公司

会議室での説明 組立工程
   
 
研磨工程  検査工程

  2012年の課外研修は8年ぶりの海外研修となり、今や経済大国となった中国に進出した日本企業を視察する研修として企画実施致しました。 

 今回訪問したのは、中国の東北地方最南端、遼東半島に位置し「北海の真珠」と呼ばれるほどの海辺の都市「大連」。大連は、近年商業施設をはじめ多くの日系製造企業が進出している都市でもあります。(大連市経済技術開発地区42号地)

 私たち一行は、日本の水栓メーカーとして8社あるうちの1社 (株)三栄水栓製作所様の中国工場 大連三栄水栓有限公司(早川部会長の同業社)を訪問しました。

 2003年2月に外商独資として【(株)三栄水栓製作所100%出資】設立、敷地面積19031㎡(長良川球場より一回り広い敷地)内には工場以外に宿舎、守衛など備えられた工場でした。そこで働く従業員は、日本人スタッフ8名以外すべて中国人で、合わせて255名(2012年5月現在)の工場です。董事務長兼総経理の夏目和典様、副総経理の伊藤一吉様のお出迎えにて工場内へと案内されました。最初に事務室を通って会議室に入りましたが、多くの事務員の方々に総立ちにて笑顔で出迎えて頂き、どことなく恥ずかしい感じでもありましたが、礼儀正しさに感動しました。そして、副総経理の伊藤様から会社概要、沿革、工場内の設備等の説明をして頂き、その後工場内をくまなく見学しました。

 工場の主な設備としては、大きな設備であった鋳造工程、鍍金工程設備、他に機械工作の専用機23台、研磨工程の研磨機20台、更にその他蛇口検査に必要な設備がありました。工場内に入りますと(2007年11月にISO9001取得、2009年6月にはJIS認定工場となっている。)工場内の現場は非常に整理整頓されており、想像していた以上にとてもきれいな職場であり(大変失礼)驚きました。特に、研磨作業における工程では、若い男女が20名、一生懸命蛇口先端部分を研磨しておりましたが、手作業で数が大量にもかかわらず、一つずつ丁寧に研磨し、完成品は非常に精度の高いものでありました。また、ここ数年来不良品はあまり出してないことをお聞きし大変感心しました。

 その後、再び会議室に戻り質疑とさせて頂き、参加メンバーより様々な質問が出ました。特に中国での販路について関心が高かったのですが、どの日本企業も直面するのはやはり中国人との強いパイプが必要不可欠でるという事でしょう。この水栓バルブ商品関連に関しても日本の大手メーカーであるTOTOが、現在中国でもシェアを拡大していますが、日本のトップメーカーですら苦戦をしているそうです。また、人件費も年々高くなっているようで、この先5年もすればこの大連でも日本人の短時間労働賃金とさほど変わらなくなると言う事、北京との高速鉄道が開通ともなればもっと加速するのでは?とお話しされておりました。この工場に勤務している従業員の人件費は、現在、高卒で1,500元~1,600元(日本円レート1元13円換算で19,500円~20,800円)大卒で2,000元~3,000元(26,000円~39,000円)、ほとんどが高卒。但し、残業は50%増、休日出勤は30%増、社会保険料も賃金の50%と高いそうです。また、従業員の自宅での冷暖房費まで(平米数で決まる)会社負担と聞いてびっくりしました。工場内にある宿舎は、残業で帰れなくなった従業員や郊外から来ている従業員、現在約100名が利用しているそうですが、三食付、冷暖房完備、一人部屋もあるなどいたれりつくせりです。

 岐阜の中小企業でここまで福利厚生を完備できている企業はないと思いますが、今の中国の工場で働いて頂く条件の一つでもあるとのことでした。ちなみに、人材の多くは郊外からくることが年々増えているそうですが、その人材の斡旋も政府系の人材紹介会社がおこない人材の採用においては、年収の20%~30%の手数料を支払って採用しているそうです。儲かる仕組みすべてにおいて役人を通すというのが現実であり、工場を建てる際も中国の役人が指定する資材を使用しなければならず、許可がないと勝手に工場を大きくすることもできないことも知りました。まさに権力社会の実態を改めて感じ得た話でした。


 
この後、私たち一行は大連を堪能することになりました。大連は19世紀末、三国干渉によってロシアに祖借されて貿易港として栄え、その後日本の植民地支配となったという歴史を経ており、ロシア風の建物が今もなお残り、エキゾチックな雰囲気も漂っていました。また市内にはパリのエトワール広場(現シャルル・ド・ゴールド広場)をモデルにして作られた中山広場を中心に四方八方へ大通りがのびており、中でも天津街、ロシア風情街など異国情緒溢れる通りにはショップやレストランなどが立ち並び、更には軒並み高層マンションが建設中でもある近代的な地区を移動するバスの中から見ることが出来ました。初日の夕食は大連の豪華料理海鮮料理を頂きました。さしみや蒸した海老がとても美味しくお酒も進む中、映画でもあった「坂の上の雲」旅順への観光について話題が盛り上がり、翌日はその話題であった日露戦争の激戦地203高地、水師営会見所を午前中に見学をし、かつての日本を学びました。午後は緑山展望台など大連市内を散策いたしました。2日目の夕食は火鍋料理を舌包みし、参加メンバーとの懇親を更に深められた1日となりました。(2日間とも夕食は最高でした!) 

 最後に、日本の経済が混沌としている中、中国に進出している一企業を視察し、改めて中国ビジネスの厳しさ知りましたが、どの産業においても生き残りをかけるとなると日本に留まることなくワールドワイドで企業のあり方を考えること(雇用においても)がこれからはもっともっと必要ではないかと実直に思い帰路に着きました。今回は早川部会長のお力添えにて同業者でもある水栓メーカーの視察研修が実現できたこと、また参加頂いた会員の皆様、中国大連でお世話になった方々に大変感謝し御礼申し上げます。 

解説:記念碑正面に「爾霊山」という漢字が書かれているが、乃木大将の揮毫によります。「爾」は「なんじ」「あなた」という意味で、「霊」は「霊魂」「たましい」という意味で、「爾霊山」は「なんじのたましいのやま」という意味があります、これは戦争に命をなくした若い兵隊を記念するためです。そして、この碑は203高地に落ちていた弾丸と薬莢を鋳造して作られたもので高さ10.3mあります

青年部会 交流委員長 後藤 聡